理想のイケメン上司と相席居酒屋でバッタリ
あらすじ
失恋した友達に誘われて、あまり気乗りしなかったけど相席居酒屋に行くことになった。まさかそこで、いつもはクールな課長代理と相席してしまうなんて――。なぜかそれなりに盛り上がってしまい、酔った勢いでラブホテルに連れ込まれる。私たちこれからどうなっちゃうの??

 

課長代理とラブホテルに!

「ちょ、課長……」

「課長じゃない。課長代理だ」

「来年昇進じゃないんですか」

「そんなことはどうでもいい」

 

 言い捨てると、課長代理は整った顔を近づけてきた。切れ長の目。サラサラで柔らかそうな髪。近くで見ても色白の肌はきめ細かく、思わず触りたくなるほどツルツルだ。とても40手前だとは思えない。

 

 だけど、少しお酒くさい。私は手の平を向けて彼のキスを拒んだ。

「やっぱまずい……ですよね?」

「俺を焦らす気か?」

 

 私の背後の壁に課長代理は手をついた。 

 180ある男性の壁ドンだ。迫力があってドキドキする。

 

「あの、まつげ長いですね……はは」

 笑ってごまかそうとしたけど、課長代理は表情を変えない。酔ってトロンとした目で見つめてくる。やばいやばいやばい。このままだと私たち……。

「奥さん、いいんですか?」とっさに口に出した。

「妻……」

 

 おっと。さすがに怯んだか。私は課長代理の腕をくぐり抜けて、背後に回って距離をとった。

 ラブホテル。

 私は課長代理と今、そんなところにいる。

 ああ、どうしてこんなことに……。

失恋した友達に誘われて

 ことの始まりは数時間前。

 仕事を終えた私は、親友の真希とふたりで駅前のカフェにいた。

 

「ねえ、ちょっと行ってみない?」

 ストローでアイスコーヒーをかき混ぜながら、真希が唐突に言った。

「行くってどこへ?」私は小首をかしげた。

「うん、居酒屋」

「お酒か。いいね。ちょっと飲みたいかな、って実は私も思ってたんだ」

「あの、普通の居酒屋じゃなくて……加奈はあんま好きじゃないかも」

 

 それですぐにピンときた。

 真希は最近彼氏と別れたばかりなのだ。昨日の夜も遅くまで音声チャットで泣き言を聞かされた。優しい男性と出会いたいと繰り返しながら、そのちょっと特殊な居酒屋のことを何度か口にしていた。

「もしかして相席居酒屋?」

 飢えてるみたいであまり気が進まない類の店ではあった。だけど、加奈ぁ、と上目遣いで見つめてくる真希の期待を裏切れない。

 アラサーの女が相席居酒屋なんてどうかと思ったが、彼女の新しい出会いに一役買ってあげるのも悪くない。そんなふうに思った。それに少々の好奇心も芽生えていた。

 私も半年ほど彼氏がいない。運命の出会いがないとも限らない。

「おっけー。モノは試しで行ってみよっか」

「加奈ぁぁ!」

 

 やれやれ。

 うるうるの瞳で私の手を握ってくる真希はかわいい。カフェのお会計を済ませ、私たちはキラキラとネオン輝く街に繰り出した。スマホで調べると似たようなコンセプトのお店はいくつかあった。一番近い店に狙いを定めた。

 

 歩くこと数分。

 目的の店は雑居ビルの2階にあった。お店の前にはすでに数組の男性が並んでいて、私たちをチラチラ品定めしてくる。女性はすぐに入れるみたいだけど、男性諸君にはどうやら待ち時間が発生しているらしい。

 

「2名さまですね。どうぞこちらへ!」

 やけにはつらつとした店員にうながされ、何となく気恥ずかしい私はうつむきながら入店した。

 システムは何となく知っていた。女性は無料で、男性は確か30分で1500円とか2000円くらいだと思った。この不条理なシステムを受け入れている男性に対しても、少し嫌悪感みたいなものが芽生える。

 もちろん、「緊張するね!」と目を輝かせている真希に向かって、そんなことは口にしないけど。

 

2組目の相席にまさかの上司!

 実際は緊張していた。

 私だってまだまだ女盛りだ。出会いの予感にトキメキを覚えないはずがない。

 

 ただ、やっぱり意地みたいなモノが残っていて、落ち着かない様子を真希には見せたくなかった。だから頬杖なんかついて、ちょっと退屈そうなポーズを取ったりした。

 

 5分も経たないうちに2人組の男の子がやってきた。

 真希の気配がふわっ、と華やぐのが分かった。

 2人とも若かった。まだ10代くらいにも見えたけれど、20未満の入店には店も神経を尖らせているだろう。きっと年齢確認が実施されているはずだ。

 

「田中です。よろしく」

 そう挨拶してくれた男の子は細身で、手足がしなやかに長い。髪はフサフサのブラウンでアイドルみたい。朗らかな笑顔が魅力的だ。

 

「僕、年上好きなんですよ。OLさんですか?」もうひとりの男の子はワンクッション入れてから名乗った。「木崎です。おふたりともキレイで緊張しちゃうな」

 こちらは黒髪ベリーショート。清潔感があふれている。ガッチリした体躯で、鍛えているのが服の上からでも分かる。

 

 田中君も木崎君も落ち着いた雰囲気で馴れ馴れしくもなく、初対面の距離感を適切に保っている。

 ひと言で表現するなら、「当たり」だった。

 続いて私と真希が簡単な自己紹介を済ませると、タイミングよく店員さんが現われて、乾杯の音頭を取ってくれた。

 こうして私の初相席居酒屋体験は無事にスタートした。

 と、思っていたのに……。

 

 彼らの人当たりのよさと気遣いにすっかり緊張も解け、テンション上がってお酒が進んで、それなりに酔っ払った頃に事件は起きた。(つづく)

 

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