放課後の教室、追試の時間、教え子に許してしまった体
補習の時間、放課後の教室で、私はクラスの教え子に体を許してしまう。野球部のゴツゴツした手で全身をまさぐられ、立場も忘れて大声でよがってしまう。イケナイことだって分かっている。だって私、結婚を控えた身だから……。(ページ数2)

 

放課後の教室

 頬杖をついてぼんやり眺めていた。

 すると突然、彼が顔を上げた。

 目が合った。

 慌てて視線を逸らした。

「先生、今俺のこと見てただろ?」

「ち、ちがっ、カンニング、してるんじゃないかと思って……」 

 その場しのぎの言い逃れとしては最悪だ。言うに事欠いて生徒に向かってカンニングだなんて……。

 

「ひでぇな、先生。そんな事できるわけないだろ」

 頬を膨らませ、彼は教室内を見回した。 

「だね、ごめん」 

 少し開いた窓から、もわっとした風が入り込む。夏草の匂いがした。

 

 永田一樹。

 夏服の彼と教室で2人きり。カンニングする相手も、させる相手もいない。

 もしかしたら、彼はわざと赤点を取ったのかもしれない。そんなことを考えてみる。私の追試を受けたくて。

 わけないか。思い上がり。

「先生さ」

「何?」

「もしかして俺のこと好き?」 

「は?」

 思い上がりは永田一樹の方だ。と、非難したいところだけど、彼の一挙手一投足に最近翻弄されてばかりだった

 

 だって私、恋しちゃってる。

 毎晩寝る前に彼のことを考えたりする。

 それだけで、泣かされる。 

 もうすぐ結婚を控えている身でありながら――。

 

引き下がるくらいなら…

「ほれ、終わった」

 永田一樹がテスト用紙をヒラヒラさせながら、教壇に向かってきた。

「ちゃんと見直したの? まだ時間あるよ?」

 首をひねり、壁掛け時計を確認しながら手を差し出すと、ふいに温かいものが触れた。

「ちょ、何してんの!」

 手を握られたのだ。慌てて振り払った。テスト用紙が床に落ちた。

 

「結婚するんだって?」

 永田一樹がまっすぐに私を見つめてくる。それで鼓動が激しくなる。顔が赤くなっていないか心配だった。

「うん、そう。誰に聞いたの?」

 なるべくそっけなく聞き返すのが精一杯だった。

「そいつ、俺よりいい男?」

 私の問いには答えず、彼が顔を寄せてきた。息が苦しくなる。緊張にたえられなくなり、テスト用紙を拾おうとしゃがんだ。

 すると彼は私の後ろに立ち、

「先生のこと襲っていい?」

 そんなことを言い放った。

 

 言葉の意味をとっさに理解できず、私はテスト用紙片手にぼんやり立ち上がった。するといきなり、本当にいきなり、振り返る私に永田一樹は抱きついてきた。

「やっ! 何してんの!」

「ごめん、我慢できなかった! ど、どうしよう……」

 なぜか彼も慌てている。

「離れなさい」冷静に。冷静に。そう自分に言い聞かせる。

「やだ……」駄々っ子のような彼の声。

「大きな声出すよ?」

「それも、やだ……」

「何なのいったい?」

「どうして結婚なんかするんだよ……俺みたいなガキじゃ、太刀打ちできねえじゃん……」

 弱々しくつぶやくと、彼は腕の力を弱め、私から離れた。

 彼の逞しい腕の感触が消えていく。

 

「私の結婚相手、頭いいんだ。医学部出て、でも医者にはならないで国立の研究機関で働いてる。ガンから人類を救うんだって、息巻いてる。だからそうだね、君じゃ太刀打ちできないよ」

「そっか……」

「彼、秋になったら渡米するの。数年は向こう。結婚して、私はもちろんそれについて行く。だから君と会うのは終業式が最後。もうサヨナラだね」

 視線も肩も落とした彼が、ちょん、と頭を下げ、自分の机に戻って行く。広い背中が遠くなる。

「引き下がるの?」

 口が勝手に動いた。

「あっけなく引き下がるくらいなら、最初から余計なことしないでくれる?」

 勝手なのは口だけじゃない。

 熱いものが頬を伝い、止まらなくなった。

 

「永田一樹! 野球バカ。赤点なんか取ってんじゃねーよ! アンタのことなんか、すぐに忘れる!」

 あふれて止まらない想い。

 どうしてだろう。どうしてこんなに好きなんだろう。

「俺にしろよ、先生」

 彼は私の元に戻ってきて、再び私を抱きしめた。強く。強く。

 

教室で勢い任せのキス

 ショーツを脱がされ、彼の机の上に座らされ、脚を広げられた。そのまま永田一樹が覆い被さってきて、

「先生、好きだ。好きだ、好きだ」

 うわごとのように繰り返し、唇を重ねてきた。

 

 私はそれを受け入れる。下唇を甘噛みし、引っ張って離す。上唇に吸い付く。歯茎を舐めると彼が舌を出してきたので、そのまま吸い上げた。ジュプ、と音が漏れた。じゅる、じゅる、くちゅ。

 勢い任せのキスの後、唇が離れると、彼は首筋に舌を這わせてきた。

「はんっ……」

「ああ、やべえ。気が狂いそう」

 彼は私の声に過敏に反応する。

 舌は首筋を這うだけではなかった。

 強く吸い付いてきた。

 

 キスマークで赤くなるだろうけど別にかまわなかった。私は彼の頭を抱え、お返しに彼の首にもしるしを付けた。

「やべえ、やべえ!」

 息がどんどん荒くなる。彼の腰がもぞもぞ動いている。

 私は彼のベルトを外し、ズボンの中に手を突っ込んだ。ガチガチになったソレを握った。

 恋人とつい比べてしまう。

 固さも大きさも永田一樹の方が一回り上だった。

 若い。圧倒的に若い。

 

「欲しい……」思わず口をついた。

「先生、俺……」なのに彼の戸惑った声。

「初めて?」

「うん……」

 情けない表情と声がかわいかった。筋肉質で日焼けして、一見いかつい彼には似合わない雰囲気だった。

「心配しないで」

 彼のエラをさすりながら、ソレを私の中心に誘導した。トロトロになった裂け目の入口にあてがい、

「そのまま入ってきて」と言った。

 

 誰かに目撃されてしまうかもしれない、というリスク。彼の大きなモノに対する恐怖に似た期待。恋人への罪悪感。

 そして何より永田一樹に抱かれる悦び。

 それらがごちゃ混ぜになって、心臓があり得ないくらい跳ね回っていた。