仲居さんは初恋の人だった!

 部屋を後にしようとする仲居さんを改めて見た。見れば見るほど、早苗の面影をそのまま残しているように思えた。

「板垣、早苗さん?」

 そんな偶然はあり得ないと思ったが、確かめずにはいられなかった。呼びかけると、彼女は動きを止めた。

 

「あの……」怯えたように振り向く彼女の戸惑いがちな仕草を見て、松永は確信した。

「やっぱり! 早苗さんですよね。俺、松永です。松永亮平。覚えてないかな」

「すみません……えっと……」

 

 覚えていないらしい。それなりにショックではあるが、20年以上も前のことなのだからしかたない。でも思い出してもらいたくて躍起になった。

「ほら、さっき話した好きだった女の子。あれ、あなたです。あなたのことです。いやぁ、懐かしいなぁ。文化祭のお化け屋敷! 一緒に学級委員をしてたんだけど覚えてないかな……」

 早苗はしばし難しい顔で考をめぐらせた後、笑顔をパッと広げた。

 

「あ、ああ! あの松永君!? うそ、やだ。懐かしい! こんなところで……」

 やっと思い出してくれた彼女の瞳が少し潤んだ。ような気がした。

「本当にいいのかな。仕事終わってからだと少し遅くなっちゃうけど」

 と、彼女。口調がくだけたことが嬉しかった。

「もちろんもちろん、こんな機会滅多にない。一緒に飲みましょう」

 

 深酒をしてしまうかもしれないな、と松永は思った。

 明日の登山に影響が出るかもしれないが、それはそれでかまわないと思った。それよりも、込み上げてくる懐かしさを抑えることの方が難しかった。

 

深夜のサシ飲み

 食事を終え、温泉に入った。

 ワクワクしていた。というより、ドキドキか。

 

 ペニスを入念に洗った。高校の頃は皮が被っていたが、今ではすっかり剥けている。今夜、早苗とセックスするとは限らない。しかしその可能性がある限り幻滅されるような男でありたくなかった。

 趣味の登山のために、日頃からスポーツジムに通ってはいたが、腹が少々出ていた。もっとダイエットをしておけばよかったと後悔した。(つづく)

 

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