密室最終バス。カノジョの初恋を、後部座席で抱きしめる
あらすじ
バス運転士の「俺」が運転する最終バスに、酔った若い女性が乗ってきた。結婚でこの町を離れるという彼女の願いを聞いた俺は、彼女と後部座席で身体を重ねることになり……桜の季節、一瞬だけ燃え上がる切ない恋。(連載中)

 

最終バスに乗ってきた若い女性

 花冷えが身に染みる夜、ビジネススーツにコートを羽織った若い女性が乗車してきた。

 ちょっと気分がいいらしい。

 横がけのシルバーシートに座り、ショートカットの髪をちょこんと耳にかけ、酔いで耳と頬を上気させていた。

 グロスでテカった健康的な唇を閉じたまま、ハミングを始めた曲は数年ほど前に流行った歌謡曲だ。切ないメロディーラインが気に入り、今はつぶれたレンタルビデオ店でCDを借りたことがある。

 

 時刻は夜の9時5分。

 田舎の夜は早い。

 

 山口淳(あつし)はエンジンをかけ、車内マイクのスイッチを入れた。

「南新庄駅行き最終バス、発車します。お立ちのお客様は――」

 つり革てすりにお掴まりください。

 ついクセで言ってしまいそうになった言葉を慌てて引っ込めた。

 

 立っている客などいないのだ。旧式バスの車内は俺と彼女のふたりきりだった。

 乗客がいない時もある。田舎の最終バスなんてそんなものだ。

 軽く咳払いすると、彼女はクスリと笑った。

「言っちゃいますよね」

「ええ、習慣で……」

 話しかけられ、少々焦った。 

 言葉を交わしたのは今のが初めてだった。しかし、山口は彼女のことをよく知っている。

 

 高校生だった彼女が山口の運転するバスに乗車するようになってから、かれこれ7年の付き合いだ。もちろん運転士と乗客、という間柄であり、それ以上でも以下でもない。

 セーラー服がよく似合う可愛らしい女の子だった。

 いや、今でも十分可愛いのだが、十代の女の子が持つみずみずしさ――透明感と言い換えることのできるそれには、やはり特別な力が宿っている。

 いつも同じ時刻のバスを運転するわけではないので、朝の通学時間帯など、彼女が乗ってくると幸運を感じていた。

 

 セーラー服は3年経つと私服に変わった。

 仕事に行くようには見えなかったから、進学したのだろうと思っていた。それから更に2年が経つと、私服ではなくビジネススーツやオフィスカジュアルを身に付けるようになった。そうしてまた2年。

 単純計算で、彼女は22~23才くらいになっているはずだ。山口の1回りくらい下。

 

「もうすぐ桜の季節ですね」

 さっきの一瞬で会話は終わってしまったと思っていたが、彼女はまた声をかけてきた。 

「……ですね」

「バスの車窓から見る桜ってキレイですか?」

「普通ですよ。どこで見ても、そう変わらないです」

 何ともつまらない受け答えだと、山口は自嘲した。緊張していたのだ。

 勤務するバス会社に若い女性がいないことに加え、彼女にはずっと憧れのようなものを抱いていた。緊張するのも無理はない。

 

 しかし、こんな機会は滅多にない。ここで会話を終わらせたくはなかった。

「今日は会社の飲み会か何かですか?」

「あ、はい。ちょっと飲み過ぎちゃって」

「お酒飲めるようになったんですね。感慨深いものがあります」

「え?」

「あ、いえ。すみません、立ち入ったことを」

 

「どういうことですか?」彼女はシルバーシートから身を乗り出してきた。

「すみません、その……知ってたものですから。お客様が高校生の時から。たまに僕が運転するバスに乗車してくれたこと……」

 緊張していたとはいえ、余計なことを口走ってしまい、胸の中で舌打ちをした。見ず知らずの男が成長を見守っていたなんて、これではちょっとしたストーカーではないか。会話が終わるどころか警戒され、白い目で見られてしまう。

 

「そうだったんですか……」

 案の定、彼女はそれで喋るのを止めてしまった。しかもタイミングの悪いことに赤信号だ。

 バスを止める。エンジンも止まる。気詰まりな静寂が訪れた。フォローの言葉も思いつかない。

 沈黙は金。山口はもう何も言うまいと胸に誓った。

 

発育した胸

 バスは終点の南新庄駅に到着した。

 しかし、前ドアを開けても彼女は降りて行かない。

 

「お客さん、終点です……」

 振り返ると、彼女はシルバーシートで眠っていた。

 半開きの口から気持ち良さそうな寝息がもれている。

 

 コートは彼女の脇に置かれていた。スーツのボタンは留まっていなかった。白いワイシャツ。下着の線がくっきり見えた。

 強調されたふたつのふくらみ。なかなかの大きさだ。山口は視線を彼女の下半身に移動させた。

 口と同じく、半開きの足。ストッキングははいていなかった。生足。白い太ももの奥にある、更に白い下着がチラリと見えた。

 唾を飲み込んだ

 そして思い出した。

 高校生だった彼女が雨に濡れながら乗車してきた日のことを。

 

 確か急な雨だったと思う。

 座席を濡らさないように気をつかったのだろう。

 中ドアから乗車してきて、彼女はそのまま近くの手すりにつかまった。

 山口はその様子をミラーで確認していた。

 濡れたセーラー服がぴったり体に張り付いていた。透けた下着があまりに色っぽかった。ポニーテールの髪からも水がしたたっていた。ハンカチで拭いていたが、焼け石に水だった。

 目に焼き付けたその姿をオカズにして、その晩マスをかいたのだった――。

 

 そんなことを思い出したため、山口の股間は熱を帯び始めていた。改めて、シルバーシートで眠る彼女の胸を見る。 

「あの頃に比べて……ずいぶん大きくなったな」

 まだ控え目だったふくらみはその後スクスクと発育したらしい。

 親でも同級生でもないのに、その成長過程を知っている。そう思うと股間によりいっそうの熱が集まる。

 

 はぁ……はぁ……。

 

 息が荒くなっていた。

 彼女は相変わらず寝息を立てている。

 山口は胸から、再び下半身に視線を落とした。

 

 きゅっと締まった足首。

 すべすべのスネに赤いポッチ。虫刺されだろうか。

 ヒザ。よくよく見ると不思議な形だ。思わずなで回したくなる。

 ヒザから内側に視線をずらした。車内灯に照らされ、白さが際立つむちむちの太もも。相変わらず両脚は少し開いていて、その奥の白い布がチラリ。アソコが、ムチとふくらんでいる。

 

 終点のバス車内で眠っている彼女とふたりきり、という状況に理性が崩れそうになる。少しくらい触っても起きないのではないだろうか。

 起こすフリをして触ってみようか――。

 高鳴る鼓動そのままに、運転席から出て彼女の前に立った。そして、戸惑いながら胸に手を伸ばそうとしたら、彼女の寝息が聞こえていないことに気が付いた。

 やばい!

 そう思った次の瞬間、彼女と目が合った。