夜中に廊下を歩いていたら、あの声が聞こえてきてヤバイ
あらすじ
禁断の兄妹愛パート2。通勤電車内で密着したことで兄と妹の関係を越えてしまった俺たちは、家に帰り愛を深めようとするが……。(連載中)

 

パート1

パート2

 

おふくろの存在

 おふくろの存在は強力なブレーキとなった。翌日も玲奈と一緒に通勤し、抱き合うような体勢になって体は密着したが、アブナイ雰囲気にはならなかった。

 

「お兄ちゃん」

「どうした? キツいか?」

「大丈夫。それより今日の晩ごはんなんだろうね」

「弁当も開けてないのにもう夜の話か?」

「だよね…最近ハンバーグ食べてないなーと思って」

「あれ、けっこう手間かかるんだよな」

「うん。お母さん忙しいもんね」

 

 両親が働き者のおかげで俺は私立の大学を卒業できた。妹の可愛い制服だって安くはない。就職して微々たる給料の中から家に金を入れるようになり両親のありがたみを痛感するようになった。子育てには莫大な金がかかる。

 

「今度の日曜、私がごはん作ろうかな」玲奈が続ける。

「お、いいね。でもおまえ、料理できるのか?」

「できるもん。女の子だもん」

「おふくろの好物、焼き魚だしな」

「そう。サケ」

「サケだな」

「よゆーだよ」

 

 俺を見上げ、得意気な笑顔を見せる玲奈。そんな玲奈の頬をつまむと、ちょっとやめてよ、と抗議の声を上げる。

 誰に見せるわけでもないのに、満員電車の中で俺たちは正しい兄妹を演じていた。

 

 2人の気持ちは同じだ。おふくろを悲しませたくない。

 

 しかしそんな三文芝居で玲奈への気持ちをごまかせるはずもなかった。むしろ思いはつのるばかりだった。

 

風呂上がり

 玲奈のことを考えながら目を覚まし、玲奈に触れながら通勤し、昼食の時は食事をする玲奈の唇を脳裏によみがえらせ、午後の仕事を片付けながら玲奈の胸の感触に股間を熱くする。そして煩悩を涙で流しながら夜眠る。そんな甘くて切なくて、どうしようもない日々を送っているうちに1ヶ月がたった。

 

 玲奈はすっかり妹らしくなっていた。というより元に戻ったと言うべきか。明るくて優しい笑顔の中にはもう、俺の腕の中で瞳を濡らした女の姿を見つけることはできなかった。

 

 それでいい。

 

 あの日のアレを気の迷いだったということで玲奈がケリをつけたのなら、蒸し返すような真似はしない。それが玲奈のためであり、両親のためでもある。

 

 ただし、玲奈を思うだけで壊れそうな胸の痛みには耐えがたいものがあった。だから俺は逃げ出すことにした。

 

「ひとり暮らししようと思うんだ」

 

 ある日の夕食時、俺は玲奈と両親の前でそう切り出した。玲奈が焼いたサケの切り身は火が通りすぎてパサついていた。

 

「そう。いいじゃない」おふくろが微笑み、

「おまえもそろそろ嫁さん見つけないとな」おやじは少ししんみりしながらうなずいた。

 

 隣に座る玲奈は何も言わなかった。ただ黙々と食事を口に運んでいた。そんな玲奈の顔を直視し、表情を確かめることはできなかった。

 

 ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ期待していた。玲奈に反対されることを。我ながら小さな男だ。

 

「嫁さんもそうだけど、俺もぼちぼちアラサーだろ。あんじゃん、出世とか。主任とか係長とか視野に入ってくるわけよ。そうなると実家暮らしじゃサマになんないからさ」

 

 小さな男なりの小さな見栄を張り、食事を終えてビールを飲み、風呂に入ったらうっかり眠ってしまい、長湯から上がった頃にはすっかり夜が深まっていた。

 脱衣カゴの腕時計を見ると1時すぎ。朝早い両親はとっくに寝ている時間だし、夜更かしが苦手な健康体の玲奈も起きてはいないだろう。

 

 音を立てないよう忍び足で2階の廊下を進み、突き当たりにある自室へ向かう。しかし途中、玲奈の部屋の前に差しかかった時、なにやら艶かしいその声を聞いた。

 

「ん…あっ…」

 

 ドキリとして立ち止まる。部屋の開き戸はどうやら完全に閉まっていないようで、明かりと共に声が漏れてきた。

 

「くふぅ、んんっ…」

 

 心臓の鼓動が一気に早くなった。テレビやゲームの音ではない。それは間違いなく玲奈が発している声だったからだ。

 あの日、玄関で間近に聞いた湿り気のある声。

 

 玲奈はこんな時間になにをしているのだろうか――。

 

 素知らぬ顔で通り過ぎろ。頭がそう命じる。でも足がその場から離れようとしない。 

 

「はっ、ん……」

 

 まただ。また漏れてくる玲奈の切ない声。声というより、もっと動物的な何か。男を狂わせる何か。

 

 その場を離れろ。心が叫ぶ。

 でも兄としての理性より男としての衝動が勝った。

 高鳴る鼓動を飲み込むのと同時に開き戸を押していた。 

 

 生じた10センチほどの隙間にそっと顔を寄せる。奥に勉強机がある。玲奈の姿は見えなかった。視線を移した。

 ベッドだ。

 座って壁によりかかっている純白のパジャマ。肌が見えていないことにホッとしたのも束の間、玲奈は胸に手をあてがい、そして揉んだ。ぐにゅ、ぐにゅっ、とゆっくり回すように。同時に指先で乳首をつまむ。

 

「アッ、アァ……」

 

 ――玲奈!

 

 彼女のもう片方の手が見えなかった。パジャマの中にあったからだ。

 

「ダメ、こんなっ、ん…こと…アンっ…もう…寝なきゃ……」

 

 開かれた足の中心でモゾモゾと動く手。

 

「ハァンっ!」

 

 玲奈の体がビクリとはじけ、かわいい顔が歪んだ。

 

「お兄ちゃん……」

 

 心臓が早鐘を打つ。ドクッドクッドクッ――。

 

 玲奈が俺の名を呼んだ。頭がクラクラした。玲奈は……玲奈は……!

 

 俺を思ってオナニーをしているのか!?(つづく)