ミックスファイト!地下女子プロレスラーと密着お仕置きマッチ!
あらすじ
地下女子プロレスラーに戦いを挑んだのは、自らの性癖を満たすためだった。ミックスファイト。女子プロレスラーの股の間に顔を挟まれ、三角締めで落とされたい。そう思っていたのだが、つい闘争本能に火が着いて……。(連載中)

 

神様ありがとう…

 花咲カンナがトップロープに上がるのが見えた。

 マットから120センチの高さだ。

 

 まさか飛ぶのか――。

 

 はちきれんばかりの期待で息が苦しくなる。

 フライングニードロップか。あるいはフライングボディプレスか。できれば後者であって欲しい。

 あの高さから本気でヒザを落とされたらマジで死ぬかもしれない、という理由ではもちろんない。

 

「コノやろうぅぅ!」

 鬼の形相を浮かべ、カンナが飛んだ。両手両足をいっぱいに広げて。

 フライングボディプレス!

 神様、ありがとう。

 俺はそっと目を閉じた。 

 カンナの体が自身に落ちてくる感触を、白いコスチュームに隠された意外と豊かな乳房が俺の上ではずむ幸運を、全身全霊で受け止めるために――。

 

道場破りの動機

 きっかけは今朝のひらめきだった。

 

 ひらめきとはいっても、熱心にひとつの事に打ち込み、学習を重ね、その蓄積で浮かんだような高尚なモノではない。

 金曜の仕事を終えて夜更かしし、朝と昼の中間に起きて、インスタントラーメンと冷凍チャーハンを胃袋に詰め込み、それでも物足りずポテチを漁っている時にふと頭をよぎった低レベルのモノだった。

 

「そうだ、道場破りをしよう!」

 俺は子どもの頃から女子プロレスに憧れていた。

 最初は彼女たちの熱いファイトに、純粋に胸を躍らせていたのだが、思春期を迎えた頃から下半身を踊らせるようになっていた。ミックスファイトを夢見るようになった。

 リングを舞う華麗な彼女たちに責められ、関節を極められ、ムニムニした女体の下敷きになってスリーカウントを奪われるシーンを想像してはさかんにマスをかいた。

 

 その性癖は、新卒非正規雇用のまま30を超えて、冴えない女子プロレスオタクのデブでしかなくなった今でも変わらない。

 しかし女子プロレスラーと拳を交えるには、こちらもプロとしてリングに上がる以外に道はないので、ミックスファイトへの憧れは憧れのままで終わるはずだった。

 

 ところが、である。

 道場破りなら、女子プロレスラーと戦えるかもしれない。そうひらめいたのだ。

 俺が最もヒイキにしている花咲カンナが所属している地下女子プロレスの『ビーナスタイム』は現在、全国巡業中である。ところがカンナは、ケガのため巡業には帯同していない。

 

 帯同はしていないが、マジメで練習熱心な彼女のことだから、ひとり黙々と練習に励んでいるはずなのである。俺の家から車で1時間ほど走った場所にある『ビーナスタイム』の練習場で。

 

 カンナは元アイドルだ。

 残念ながらアイドルとしてはあまり売れなかったが、一定数のファンはついている。そこを見込まれて『ビーナスタイム』からスカウトを受けた。

 

 先日のデビュー戦では巨体のヒールから洗礼を受けた。ボロクソに責められ、ジャイアントスイングで何度も吹き飛ばされ、最後はキャメルクラッチでギブアップ。カンナはマットの上で号泣した。ヒジの靱帯を伸ばしてしまった。

 俺はそんなカンナの姿に胸を熱くし、それ以上に股間を熱くした。

 何と言っても元アイドルだ。ただでさえ顔面偏差値は高い。

 華奢で白い身体がボロ雑巾のように汚されていく姿は、今もこの目に焼き付いている。

 

 そんなカンナと肉体をぶつけ合うチャンスが少しでもあるなら――。

 

 俺は高鳴る鼓動を抑えることができないまま、車を走らせた。

 

挑発からミックスファイトへ

 練習場の鍵はかかっていなかった。

 そっと扉を開くとバンッ、というマットを叩く小気味のいい音。そして荒い息づかい。

 

 いる。

 

 マットの中央、ひとりで受け身の練習をしている小さな体躯。

 花咲カンナに間違いなかった。

 

 このまま練習場に入っても警戒されるだけだが、それでかまわなかった。

「花咲カンナ!」

 俺は大声を上げた。カンナが動きを止める。

「プロレス舐めんなよ!」

 キッ、と睨まれた。

「デビュー戦でまともに技出せなかったじゃん! ちゃんと練習したのかよ!」

「は? 部外者勝手に入ってこないでもらえます?」

 

 惨敗したデビュー戦のことを持ち出して、思い切り挑発してやるつもりだった。

 警戒心より先に彼女の屈辱に油を注いで、怒りに火を着けてやればいい。

 

「所詮アイドル上がりだよな。マットの上でビービー泣いちゃって。みっともねえ。みっともねえよ」

「テメぇ、何なんだよ?」

 カンナがぎゅっと拳を握った。その拳が小刻みに震えだした。それでいい。その負けん気が俺の夢を叶えてくれるのだ。

 

「みっともねぇって言ったんだよ。アンタより俺の方が強いんじゃないの?」

「はぁ?」

「田舎帰れよ。田舎帰ってパパとママとプロレスごっこしてるのがお似合いだよ、アンタにはな!」 

 ダメ押しだった。親の事を持ち出すという卑劣な手段に、カンナはまんまとキレた。

「テメぇこっちこいよ!!」

 リングの上からペットボトルが飛んできた。それが試合開始の合図だった。