
新人OLとオッパイパブで
「あ、柏木係長……」
「キミ……」
会うなり顔を見合わせ、ふたりで絶句した。なぜなら……。
会社の食堂でもない。
会議室でもない。
電車の中でもない。
今年の新人社員である小川麻美(おがわ・あさみ)と偶然出会ったこの場所は――。
『ランジェリーパブ・スーパーハッスル』
そう、ここは新宿歌舞伎町にあるオッパイパブなのである。
「どうして、係長がここに……」
たっぷり10秒は見つめ合った後、やっとのことで口を開いた彼女の声は震えていた。
「いや、それはこっちのセリフなんだが……」
同僚の山田とサシで飲み、酔っ払い、勢いづいて肩を組み、この店に乗り込んできた。
店内は暗かった。
仕切りのないソファ席に通された。
周囲を見渡すと、暗がりの中、男の上に乗り、オッパイを揉まれ、しゃぶられる女たち。その淫らな腰つきがイヤでも目に入った。
気持ちが高ぶった。
下半身をギンギンにさせたところで、ボーイが小川麻美を連れてきた。
彼女の格好はあられもなかった。
スケスケのランジェリーからは、乳首が透けて見えている。
「そういえば……」俺は彼女の乳首から目を逸らして言った。「山田係長も一緒なんだが……」
「え?」勢いよく顔を上げ、麻美は目を見開いた。「嘘、やだ、どうしよう……」
彼女は、かわいそうなくらい慌てた。
それはそうだろう。
俺と麻美は課が違うが、一緒に来店した山田は麻美の直属の上司だった。
美人で明るくて、そつなく仕事をこなす麻美のことを、山田は入社時から目に掛けていた。はたから見ても、いい上司と部下の関係だった。
麻美にとって、 オッパイパブで働いていることを、あるいは最も知られたくない相手かもしれない。
「ど、どのあたりに座ってるんですか…?」麻美の泣きそうな声。
「入口の近くに通されてたぞ。ここからは見えないけど……」
一瞬、ほっと息を漏らした麻美だったが、またすぐにうろたえ始める。
「あ、でもここ40分で3回転で…次は山田係長のところに行かされちゃうかも…」
彼女の目に涙が浮かんだ。
指名しようか、と俺は言った。「そうすれば、キミはずっとここにいられるんだろ? 山田と顔を合わせずに済む」
「ほ、ホントですか! お願いします! 山田係長にこのことバレたら、わたし……会社に行けないです……」
俺も一応会社の上司なんだが。とは、口に出さなかった。
OLが風俗で働く理由
お金だろうか。たぶんそうなのだろう。
やや落ち着きを取り戻した麻美がオッパイパブで働く理由は。
決して景気のいい会社ではないから、彼女の手取りは少ない。プライベートな事情は全く知らないが、奨学金の返済に困っているのかもしれない。彼女は懸命に生きているのだ、と思った。
それにしてもである。
困ったことになった。俺は安くはない金を払ってオッパイを触りにきたのだ。この状況では、目の前のご馳走にありつくことができない。
お預けを食らったマヌケな犬状態だ。
足を組んでギンギンの下半身を悟られないように横目でこっそり麻美を見る。
恥ずかしそうに身を縮め、胸を隠している。
はつらつと仕事をするスーツ姿とのギャップを目の当たりにし、体温が上昇した気がした。
安物のランジェリーから伸びるしなやかな腕。
肉付きのいい太もも。
そして、オッパイ。
以前、仕事中に彼女の胸チラをおがんだことがある。コピー機が壊れて、ふたりでアレやコレやと色々試している時だった。かがんだ拍子に彼女のブラウスの胸元が開いた。
首にぶら下がる金のネックレスの奥に突如出現した、たわわな果実。
彼女が動くたびに揺れる白い果実は、もぎたての桃を思わせた。
みずみずしさに目眩を覚えた。
その白い桃が、今は目の前にある。手を伸ばせば簡単に触れることのできる距離に。本来なら触れることが許される場所で。
しかも、桃の中心にはブドウが乗っかっている。それが透けて見えているのだ。
激しい葛藤が生まれた。
密かに憧れていた新人OLちゃん。決して触れることは適わなかったであろう、魅力的な肢体。
これをきっかけに、麻美は今日でこの店を辞めてしまうかもしれない。
そうなれば、こんなチャンスは2度と巡ってこないだろう――。
「あのさ」俺は興奮でノドをヒリつかせながら言った。「触ってもいいよね?」
「え?」彼女は驚いた表情を見せる。
「だって、そういう店なんだが」
「で、でも……」
「お金払ってるし。指名だってしてるから、余計にお金かかってるし。俺の今日の予算オーバーしてるし」
彼女は怯えたように瞳を揺らし、うつむいた。その様子に獰猛な気持ちが湧き上がってきた。
「いいよね?」
肩に手を置いたら、小刻みに震えていた。強引にその肩を抱き寄せた。彼女は身を固くした。
「いやっ!」
「いやいや、俺客だし」
「柏木係長が…そんな人だなんて……」
若くていい女の前でいい格好をしたい、と思わない男はたぶんいない。しかしドラマのようにはいかない。キレイに彼女を救うナイトには、俺はなれない。
どのみち週明けには会社で顔を合わせる。バツが悪いのはお互い様だ。どうせ恥をかくなら、最後まで――。
「山田に知られたくないんだろ? でも勘違いしないでくれ。キミと無理に関係を結ぼうってわけじゃない。ただ単に、ここはそういうシステムの店ってだけだ!」
「ちょっ、でも…!」
彼女の組まれた腕をほどき、ランジェリーの中に手を滑らせ、桃の果実をわしづかみにした。
「だっ…め…!」
オッパイはぐにゃぐにゃに、俺の手の動きに合わせてその形を変える。柔らかい。あまりに柔らかい。
それなのに、指に力を入れると押し返してくるような弾力。若くみずみずしい女の魅力がここに凝縮されていた。