団地妻の使い古された乳首
締まりのない蛇口から漏れる水滴が、ポタポタとシンクの底を叩く。
俺は立ったままの体勢で、琴美は俺の前にしゃがんでいる。股を左右に開いたM字開脚の姿勢だ。パンティーもろ出しの彼女にプライドの欠片は見当たらなかった。
琴美にしゃぶられていた。ペニスを咥える琴美が頭を前後に動かすたび、ジュル、ジュプ、という淫靡な音が彼女の口から漏れた。
「ううっ…」
俺も思わず声を漏らす。琴美はペニスを吸い上げながら、根元まで咥え込む。そしてノドで締め上げる。ぎゅっ、と亀頭がつぶれる感触がやばかった。
欲情した男と女による粘膜のコスリ合いに、笛を吹くような優雅さは皆無だった。
琴美は開いた脚の真ん中にある女の避け口をなぞっていた。俺が命令したわけではない。脚も自ら広げたのだ。
「先生、好きだ……」
まったくどうかしている、と思ったが、本当に中学生の頃に戻った気がしたので仕方がない。琴美もまんざらではないようだった。
愛してるとか、美しいとか、俺と一緒になれとか、とち狂ったコトを俺が言うたびに、舌をカリに絡めたり、裏筋に歯を当てたりして刺激を高めた。
しゃぶられながら、琴美のぱっくり開いたワンピースの胸元に手を差し入れる。あまり起伏のない乳房の頂点に、コリ、と干しぶどうのような感触があった。
つまむと、
「ンンッ…」
琴美はビクリと体を震わせた。
指でつまんだだけで伸びた状態であることが分かる。旦那に吸われすぎたのか。子どもに吸われすぎたのか。あるいはその両方か。
俺は猛烈に、それを口に含みたくなった。琴美がこの10年で失ったきたモノの象徴であるように感じたからだ。失われたモノには彼女の恥が詰まっている。そう思うとなぜか感情が高ぶった。
ペニスを琴美の口から雑に引き抜いた。歯がカリにひっかかり、グリと痛みが走る。
「痛てーなコノヤロウ!」
反射的に琴美の頬を張っていた。「キャ」と短い悲鳴を上げ、琴美はその場に倒れ込む。俺は痛みに過剰な反応を示してしまう質だったのだ。
「わ、悪い、先生!」
「いいの、ちょっとびっくりしたけど大丈夫よ」
そう言った琴美の胸元からやっぱり乳首が見えた。俺は琴美に覆いかぶさり、安物のワンピースを破き去った。
琴美はまた悲鳴を上げた。
もっと優しくすればいいのに、と自分でも思うのだが、火がつくとどうしてもブレーキが効かない。
パンティーだけに剥いた琴美を乱暴に押し倒した。仰向けになった彼女の両腕を強くつかみ、おっぱいをまじまじと見つめた。伸びているだけではない。今まで気づかなかったが黒ずんでいた。
俺以外の男にどれだけしゃぶらせてきたのだろう。昔は、想像の中の乳首は、こんなんじゃなかった。ピンク色でツンと尖っていた。損なわれた美しさに思いを馳せたら腹が立ってきた。
「この淫乱女が!」
琴美にとって不条理な怒りだ。分かっている。でもとにかく腹が立って、ペニスもガチガチになって衝動を抑えることができなかった。
パンティを剥ぎ取って、体をひっくり返し、妄想の中の音楽室で犯したように琴美の赤い肉の裂け目に思いっきり突き刺した。
「ハァンっ!」
首をのけ反らせ、琴美の体が跳ねる。細い腰をつかんで幾度も突き刺した。まだ潤いきっていない肉のせいで摩擦が強く、少し痛い。
「あんっ、ヤっ、すごい! 真之介君! アァッ! だめ!」
でもその痛みがいい。突くごとにピリピリとした快感が全身に走る。俺の頂点はもうすぐだった。気持ちが入りすぎていた。
ズプズプ、ズシュ。次第に琴美も潤ってくる。おかげで俺のストロークはその速度を増す。ギシギシと床がきしむ。琴美の嬌声が大きくなる。
「ひぃっ、アンッ、アぁぁ! 当たってる! 奥に当たってるのぉぉ! やん、壊れちゃうぅぅ!」
「そのつもりだ!」
とどめに渾身のひと突き。今までよりもっと奥に突き当たった感触があった。
「ヒィぃぃぃぃっ!」
雄叫びと共に琴美の体がビクビクと跳ね回り、ペニスを絡め取るように膣がうねる。そして次の瞬間、急に体を弛緩させてグッタリとなった。
「おい、先生! おい!」
返事はない。琴美は失神している。憧れていた人を中イキさせた充足感が、俺の爆発の着火剤となった。
「ぬおぉぉぉっ、イクぅぅぅぅ!」
尻の奥あたりで生まれた快感が一気に爆発した。注射器に押し出されたように精液がほとばしる。琴美の体内に流れ、汚していく。
ドクドクドクドク――。
俺の全部をぶちまけてしまいたくて、俺は射精しながら腰を振り続けたが、やがて爆発的な快感は収束して満足したような、だけど同時に切ないような感覚に襲われた。部屋にはいつの間にか西日が差し込んでいた。
俺はペニスを引き抜き、琴美を仰向けに寝かせた。黒く伸びきった乳首が小刻みに震えている。毛布か何かかけてやろうとして立ち上がった時にはすでに、俺は琴美とその子どもを連れて組織から逃げる決意を固めていた。
――バブル前夜。
翌年に大阪の球団が優勝することも、この5年後に元号が昭和から平成へ変わることも、この時の俺には知る由もなかった。(おわり)